身体によい飲み物といえば、美容によい飲み物といえば、デトックスドリンクといえば、もう、一も二もなく白湯である。
……というのがいつからか常識になっています。
これいったいいつからはじまったんだろう?
昔からずっとそうであったような気もするし、ここ数年で急に白湯選手がその実力をぐんと伸ばしてきた感もあります。白湯がトップ独走するまでは、そうだ、白湯は人畜無害な「ゼロ」の飲み物で、そこに私たちはつねにプラスアルファを求めていたのではないでしょうか?
黒烏龍茶が摂取した脂肪分を流してくれるとか、杜仲茶で便秘が治るとか、ローズヒップティーでビタミンC摂取とか。
「白湯なんてなんの役にも立ちゃしねえ」
部員にはずっとそう思われていたはずなのに、毎日の居残り練習が実を結び、いつしか他部員たちのタイムを抜き県大会で記録を残し部長に一目置かれ「みんな白湯を見習うように」などとコーチにいわれるようになる。
おまえ、いつからそんな地位に……?
白湯選手を前にまぶしく目を細める俺たち。そう、あいつは音もなくそっと――電光石火の恋のようにいつのまにか――そこにいたんだ。
なんでそんなに白湯がいいのか?
わからない。
そう。なんで白湯がいいのか、なにも調べることはせずに私はただブーム乗っかるだけでした。
といってもたまに寝起きに飲んでみる、というくらいでとくに習慣にしていたわけではありません。
ただなんとなく、「白湯がいい」って口にして「白湯を習慣化する」そのイメージがいいと思ってた。
そして白湯の好感度と、「白湯を飲むのは女性にとって常識」と化していくそのスピード感に流されるまま、待ったをかけられずにいたわけです。
でもそのじつ、心のどこかで思っていたんですよね、「そんなに白湯にデトックス効果なんてあるんだろうか?」って。世間でいわれているほどにダイエット効果だの美肌効果だの、そんなものが熱した湯にあるなんてちょっと考えにくいなって。
だってこの白湯に関して「あまりにデトックス効果が強力すぎるため一日に800ml以上の摂取をしてはいけない。でなければデトックスされすぎて出過ぎちゃうから」ということを言っている人もちらほら見受けられるわけです。
白湯で?デトックスされ過ぎ?そんなバカな!
いったいそんな強い作用をしてしまう、どんな成分が白湯に入っているというのでしょう?
たとえば私のなかで効果が絶大で確実で即効の美容法といえば、いまだに砂糖断ちなわけです。
しかしこの砂糖断ちというのは
「現代社会で私たちが当たり前のように大量摂取してしまうものを意識して断つことによって本来こうでなければならなかった身体の状態に戻る」
ものであり、もっとシンプルにいうと
「悪いものを摂らないことで悪い作用を起こさないようにする」
だけのことなんです。
だからなにかを積極的にぐいぐい足していくような、プラスの美容法ではありません。効果は絶大だけど。
以前にも砂糖断ちをするうえでのもっとも大切なポイントとして挙げましたが、
「美容に大切なことは、なにを食べるかではなくなにを食べないか」
なのです。
それで、白湯に関する美容情報あれこれというのも、結局これと同じことなんじゃないかと思ったわけです。
私たちはお茶の葉を煮出したお湯を飲んで、その効能をいろいろと求めてきたわけですが、それらはやはりどれだけ美容や健康によくても、異物としてろ過するために臓器に負担をかけることは間違いありません。ましてやコーヒー(健康に良い・悪い論争を繰り返していますが)のようなカフェインを摂取していれば臓器への負担はさらに増します。ついでにカフェインは乾燥肌も招きます。

これは
「現代人が白湯を飲むことであまり臓器に負担を与えない生活を送ることができる」→「その結果ちょっと調子がよくなってくる」
そんなシンプルな話なんじゃないだろうか、と思うわけです。
とくにカフェイン中毒の人は、わかりやすく乾燥肌が改善されることが多いはず。しかしこれは「白湯を飲んだから」ではなく「カフェインを摂取しない」ことの結果に過ぎません。
湯に「デトックスが!!!」とまで謳わなければならないほどの効能があったらむしろこわい。
つまり白湯に美容効果が見込めるとすると、
- 白湯を飲む習慣をつけることで臓器に負担のかかるものを飲まずにいられる
- 温かいので内臓が冷えない
という2点に絞られるのではないでしょうか。シンプルである。
私たちに必要なのは七色に光って飲めばたちまちHPが回復するポーションではない。白く透明でなにも邪魔せず負荷をかけない無垢な白湯なんだってことです。あまりに効能を謳いすぎてはよくない。
しかし唱えられる「白湯の発がん性」トリハロメタン問題
ここで問題となってくるのが白湯のトリハロメタン問題です。
トリハロメタンというのは、有機物「フミン質」と塩素剤が反応して、水道水にはどれだけ抵抗しても否応なく含まれてしまうものです。
このトリハロメタンに発がん性の疑いありとアメリカで提唱され始めたのをきっかけに、日本では1992年に規制されるようになります。
塩素剤がなければいいんですが、そうすると今度は水道水に雑菌が好き放題繁殖してしまいます。それも困るわけです。雑菌ヤダー。
発がん性とというのはつまり免疫系統の乱れを起こすことでもあります。その結果、たとえばアレルギー症状が悪化するようなこともありうるということ。
一時期話題になった本だと思うのですが、「腸をダメにする習慣、鍛える習慣」を書かれた東京歯科医科大学名誉教授の藤田紘一郎氏は、トリハロメタンの摂取量が増えると集中力の低下や疲労、イライラなどの精神の乱れにもつながるとおっしゃってます。
このトリハロメタンが白湯を習慣にする人にとって問題なのは、「沸騰させることで一時的にトリハロメタンの量が3倍程度に増えてしまう」からですね。
「一時的にトリハロメタンが増える」のは一般的に沸騰させてから5分程度であると言われています。
10分以上沸騰させ続けることで、トリハロメタンが蒸発してしまって、よし大丈夫!という状態になるのだとか。
トリハロメタンというか、トリハロメタンに含まれるクロロホルムが問題なんですが、クロロホルムは揮発性なので、やかんなどで沸騰させる際は蓋を開けておかなくてはいけません。
加熱時間についてもいろいろな人がすでに研究をしているんですが、5分間の沸騰で大丈夫という結果や、いや10分以上だという結果や、ちょっとバラつきがあるんですね。大阪水道局など、「沸騰後50分加熱を続けることでトリハロメタンが蒸発する」と言っています。50分加熱したら水も蒸発してますからね、それはトリハロメタンもないですよね、当然。
おそらくこのバラつきは、各地の水道水の状態に違いがあるということが大きいのでしょう。含まれている塩素剤の量によって加熱に必要な時間は変わってくるはずです。
簡単に安全な白湯を作る方法はないのか?
いろいろ考えてみました。
①ミネラルウォーターで作る。
水道水が問題なんでしょ?ってことですよ。
塩素剤が問題ならミネラルウォーターで作ればよい。
いやしかし待て、なんだかそれは、もったいない気がする……
そう思ったんですが、どうせフランスはミネラルウォーターも安いので、そんなにもったいないという気持ちも湧き起こりませんでした。
加熱するとミネラルが減るとか減らないとかいった話もありますが、基本的には減らないと言われます。
しかし沸かしたときにヨーロッパのように白いカルキがこびりつくようであれば、それはカルシウムやマグネシウムの結晶なので、多少減っちゃってるはず。ヨーロッパはこびりつきまくりますよね。私のケトルもあっというまに白くなります。ということは、硬水となればミネラルはやっぱりある程度減ってしまうってことじゃないかと個人的には思っています。
②ブリタを使う。
普通の浄水器は、雑菌の繁殖が問題視されることも多いですが、ブリタならカートリッジはこまめに変えられるし、洗えるし、安心です。
ブリタは塩素やトリハロメタンも除去してくれます。難点は、ちょっと面倒くさいことでしょうかね。いちいち水を入れては、ろ過されるのを待たなくてはいけません。その時間になにをしていいものか手持無沙汰だという。
③活性炭を使う。
活性炭も塩素やトリハロメタンを除去してくれます。知り合いがある日、ブリタのカートリッジがきれていたので代わりに活性炭をいれて水道水をろ過してみたところ、いつもよりおいしかったと言っていました。
なぜこんなに白湯こだわっているのだろう?
ミネラルウォーターでいいんじゃないかな……って気がしてきました。
前述したように、私は巷で白湯のデトックス効果だの美肌効果だのというのは「余計なものを飲まなくなった」ことによる効果だと思います。
そしてただ温めるだけではなく、沸騰させた白湯を飲んだ方がよいというのには「トリハロメタンを除去する」という目的があったわけです。
じゃあ、ミネラルウォーターを常温で飲んでもとくに白湯の効果と変わるところはないのではないか。むしろミネラル分だけちょっと美容効果が望めるのではないか。
白湯を飲むことのメリットというのは、寒い冬には温かくてうれしい、ということでしょうね、これは大きいですね、寒いのイヤですからね。
ただ私は、冷え冷えの水でないなら、常温であれば飲み物として合格だと思います。白湯だってもともと「お湯を冷ましたもの」なので常温のものであるはずです。着込みすぎると冷え体質が加速するように、温かいものばかり飲みすぎるのも身体が弱まっていくような気もしています。
この冬場になに言ってんだと思われそうですが、美肌とともに、冷えを改善するなら下記の方法が有効です。一時間半身浴しようが風呂に岩塩をぶち込もうが、これよりも冷えが改善されることはありません。

これ続けてるとなにやっても冷えないですが、温かい飲み物を摂取し続けたところで冷えは改善されないのです。
あと、なんだか白湯を飲むと喉がイガイガしてしまうんですよね。
「それは身体に悪いものが溜まっているからで、白湯を続けて悪いものがすべてデトックスされたら甘くおいしく感じます」という記述を各所で見つけていろいろな意味で呆然としましたが、しなやかな左クリックでそっとプラウザを閉じました。
とにかく私はどうも喉の調子が悪くなってくるのです。だからただの白湯よりは生姜を絞るとか、梅干しいれるとか(梅干しないけど)そういった工夫が必要になってきます。
ただし、白湯にはひとつだけ、他の飲み物にはない圧倒的な効能があります。
それは「欲望をかき消してくれる」こと。
食欲がなくなる、と書くとあまりよくないことのようですが、何か飲むときに白湯を選択すると、「一緒になにか食べたい」という気持ちが湧きおこりません。コーヒーだとチョコレート食べたいでしょ?紅茶だとキャラメルクッキー食べたいでしょ?ハーブティーでも、こぶ茶でも、ミネラルウォーターでさえここまで欲望をかき消してくれる効果はありません。
だから私は、「なにか温かいものが飲みたいな」と思う裏に「ついでになんか食べたい」という欲望が垣間見えたときには白湯(温かい状態の)を飲むようにしています。これは砂糖断ちを成功させるのにもっとも有効と言っていい方法でした。
だって白湯とキャラメルクッキー食べてもぜんぜん!ぜんぜんおいしくないですからね!
それじゃあ、もともと食の細い人は食欲が減退してしまうんじゃないのかどうなんだという話ですが、私は食が細かったことがないのでそのへんはちょっとよくわからないというのが正直なところです。しかし食の細い人の話を聞く限りでは「白湯を飲むと胃腸の調子がいい」ようです。
アーユルヴェーダでは白湯は「消化力をあげて、胃腸を浄化してくれ、毒素を取り除いてくれるもの」とされています。
おそらく今の白湯選手にかけられている異常なほどの期待はこのあたりが拡大解釈されてしまったのではないかと思いますが、「食べすぎる人の欲望を抑え、胃腸の弱い人の食を進める」というように「ちょうどよい量を食べる」ために白湯はかなり効果的な飲みものであるということは言えると思います。
濃厚な2016年を白湯でさらりと
なんだか2016年というのは正月からこっちいろいろと濃厚な日々が続いていますね。1月からこの調子ではこの先どうなるんだ、とすでにちょっと息切れしています。
もうとっくに過ぎましたが、1月前半には私の砂糖断ちが強制的に中断されるガレット・デ・ロワのイベントなどもあり、今年は王冠のフェーヴでした。
ちなみに毎年きちんと参加してるので、よほどガレットが好きなんかと思われそうですが、私この味すごく嫌いです。すごく嫌いです。二回言いました。
楽しいから、イベントだから参加しているだけです。あとフェーヴが欲しくて。嫌いな味の砂糖を摂取するという、「一石二鳥」の反対のことわざで表したい状況ですが、そんなことわざあったかな。ないのなら早急に作るべきではないでしょうか。
では寒い日が続きますがみなさんご自愛ください。