さて、ちょっと弾丸一時帰国して来ました。
弾丸ですから、ごく親しい友人にさえ全員会うことは出来ませんでした……でもまあそれでもいろいろ濃厚な一時帰国でしたし、短いぶん、人間の凝縮された欲望を、みなさんにご覧いただけるかとも思います。
今回初めてアエロフロートに乗りました。
パリからモスクワまでの便は国内線みたいなもので、機内も狭く、個人用モニターもありません。うっかり真ん中の席で、荷物も上にあげたままだったので、二時間くらい両手を膝に置いて目を閉じ妄想することしか出来ませんでした。
ファーストクラスならともかく、私は機内食にまったくなんの期待もしていないしそもそも期待する方がおかしいと思っています。それにしてもこのアエロフロートの機内食は今まで食べた中で一番……いやなんていうか。
隣の席の兄さんはずっと目を閉じて、機内食も激しい首ふりで拒否していました。あーアレでしょ?機内食の保存料が気になるんでしょ?私も私もー!なんて思ってたけど、そういう問題を越えてたんですね。
でも私はまるで戦時中を生きた人みたいに、「機上で飢えるのが怖い」という気持ちを抱えているので、食べてしまう。
そして私が人生でその地を踏むことになるとは一度も思っていなかったモスクワにたどり着きました。
なんていうかアレですよね、この地全体に特殊な緊張感が流れている気がします。
たぶん首相が発してる覇気。
けっこう時間はあったのですが、疲れ過ぎていて、出国しようかな、とは思えませんでした。
なにか食べようかと思ったのですが、私はよく考えてみればロシアのお金の単位も、それが円に換算するといかほどかさえ知りませんでした。
無知……!無知とはまったくもって恐ろしいものです。
それで私も一応現代に生きる人間ですから、早速WIFIを探し歩いたわけです。
売り子のとんでもない美女を捕まえてWIFIを求めている旨伝えると
「カフェにしかない。でもすべてのカフェにあるわけじゃない」
というクールビューティーな返答でした。
そこでカフェをいろいろ訊ね歩くと、「コンセントはあるけどWIFIなし」とか「WIFIあるけどコンセントなし」などさまざまです。ユーロでお勘定できるとこもあって、お金を替えたりクレジットカード使うのもイヤだったのでWIFI使えてユーロで支払いできるところを探しました。
私が到着したのはターミナルDだったのですが、そことターミナルEの間の渡り廊下みたいなところにカフェがあったのでWIFIあるか訊ねてみると、なんと店員のおばちゃんがロシア語オンリー対応……!
このシェレメーチエヴォ国際空港という、「西暦10000年に世界を浄化させるため古代人がある孤高の一族にだけ伝えてきた呪文」みたいな名前の空港に着いて、私が真っ先に思ったこと、それは
「けっこうロシア語で通しちゃうんだ……」
ということでした。
フランスには「フランス人は英語話してくれない」という都市伝説がありますが、若者に話し掛ければほぼしゃべってくれます。それよりこの、「ロシア人のロシア語で通す率」の高さ、もっと有名にすべきことじゃない?事前に予備知識として知っておきたかった……
だって「バーガーキング」さえ、読むことは出来ないくらいなのです。
私が入国して、モスクワを観光するならば「ロシア語の挨拶ぐらい覚えておきな!」と言われるのも納得ですが、これただの乗り替えだし……そんなに厳しくしなくても……
でもなんとかペリエを注文して席に着き、WIFIゲット!
……と思ったらブツブツ切れる。
とてもまともに作業なんて出来ない。
そうなるとこのペリエが6ユーロ(800円とちょっと)だったことがボディブローのように効いてきます。ぐふう!
あまり、悪口を言うのもアレなんですが、不便だったことは言っておかないと空港のレポとしては役に立ちませんから、しかたない……みなさんお気をつけて!
そしてそのあとターミナルDに戻り、入ったこのカフェ!ここのWIFIがしっかりしてて素晴らしかったです。
しかもここは「289ルーブル→4ユーロ」の会計ですが、最初のカフェのペリエは同じくらいの値段で6ユーロの会計でした。なんだこれは。
コーヒーしくじって甘いでっかいのが来てしまいました。でもでっかいマグカップって気持ちが上がります。
時間があまってしばしうろうろします。
このシェレメーチエヴォ国際空港について、みんな「あそこ暗くてなにもないでしょ?」とよく言うのですが、確かに暗くてなにもないです。
でもこういうソファー席があるのは親切だと思いました。すぐ埋まるけど。
かっこいい従業員出入り口。
自撮りを頑張る美女。
ブルースリーのジャージー緑バージョンみたいなのをお召しでした。そしてキャリーバッグも緑でした。彼女の緑色への編愛に心の弱い部分をつままれた気持ち。
緑と言えばこの飲み物たちが何味なのか気になって、ずっと店まわりをうろうろしていました。
抹茶味なら飲みたい、けどその確率は0.2%くらいであろう。
それからすぐにまたコンセントが必要になって、探すと壁際にいくつか見つけることが出来ました。しかし差せども差せども充電されない。私の隣にいた兄さんもマルチなコンセントを所有していたのにまったく使い物になりませんでした。電気が通っていると、見せかけている……?
乗り換えゲートはチケットに記載されていたのとは変更になり、一階に下りてゲートをくぐってからバスで運ばれて行くことになりました。そしておりたったとこ ろで飛行機に乗る際、日本人のおじさんがちょっと列を外れて飛行機の写真を取ろうとしたところ、恰幅のよいロシア人の男性職員に思い切りロシア語で怒鳴られてしまいました。
私が思ったことは、たとえわからない言葉でも、怒鳴られると怖いなってこと。
とくにロシア語ってちょっと舌巻く感じになるので怖いですね。
日本人のおじさんも肩がびくっとしていました。
さてモスクワ→成田間は、個人用モニターはあるのだけど観たい映画がまったくありませんでした。がっかり。
アメニティは経験した中で一番シンプルです。スリッパとアイマスクと「食事のときは起こしてor起こさないで」みたいな(だったと思う)シール。
機内食は……
機内食は……
糊。だと思いました(オートミール?)。
フォーチュンクッキーがあったので割ってみました。
You have an active mind and keen imagination.
と、裏に書いてありました。ロシア語で放り出されなくてよかった。
なんだか、飛行機の中での客室乗務員によるサービスってどこでも同じリズムだと思っていたのですが、アエロフロートは独特の間合いを持っていて、いろいろ揺さぶられました。
とくに食事が終わると、食器はどこでもさっと片付けるところが多いですが、アエロフロートはけっこう長い間放置します。エコノミーは狭いので、それがイヤな人も多いかもしれません。
そして無事成田に着くと、私のまわりでもファンの多い、「Youは何しに日本へ?」の収録やってました。ちょっとミーハーな気持ちになる。
ただいま帰りました。